誕生日当日

聖殿内は何やら落ち着きのない雰囲気だった。
ルヴァは一体何があったのかと急いで自分の執務室へ足を運んだ。
いつもなら聖殿入り口からルヴァの執務室までの間に他の守護聖に会うのに、今日に限って誰にも会わなかった。
ルヴァは部屋に入っても何だか落ち着かなず、机の上に置いてある報告書を片手にジュリアスの執務室へ足を運ぶ事にした。
ジュリアスの執務室に向かう途中前から急ぎ足で歩いてくるリュミエールが目に映った。
「リュミエール。おはようございます」
ルヴァが挨拶をするとリュミエールはビックリした顔をし、
「お、おはようございます。ルヴァ様」
と言った。
ルヴァが何かあったのですか?と聞こうと口を開いた瞬間
「ルヴァ様すいません。急いでいますので失礼します」
とルヴァの前から立ち去った。ルヴァは一体どうしたのかと首をかしげ、とりあえずジュリアスの執務室へ向かう事にした。
ジュリアスの部屋の前に着き、軽くドアをノックした。
「誰だ?」
「ルヴァです」
中からジュリアスの声が聞こえ、ルヴァはほっとした。
「ルヴァか、今手が離せないので悪いがまた後で来てはもらいないだろうか?」
ドアを開けようとしていたルヴァは中から聞こえてくるジュリアスの声に、
「わかりました」
と答え、自分の執務室へと戻って行った。
いつもなら外から執務をサボるゼフェルを注意をするランディやマルセルの声がするのにそれも聞こえてこない。
お茶でもどうですか?と来るリュミエールやオリヴィエも来ない。
だんだん、ルヴァは初めて聖地にきた時の孤独感が甦って来た。
その時、軽くドアを叩く音を聞いた。ルヴァは気のせいかと思ったが、再度ノックの音がし、返事をした。
「ルヴァ様失礼します」
入ってきたのは薄く化粧をしたマルセル。
「マルセル、どうしたんですか?その顔」
「じゃんけんに負けてしまって・・・」
「じゃんけん?」
「はい。じゃんけんをして負けた人がオリヴィエ様にお化粧をされて、ルヴァ様を迎えに来る事になったんです」
「私を??」
「そうです。さ、ルヴァ様行きましょう」
「行きましょうってどこへ??」
「いいからはやく」
マルセルはルヴァの腕を引っ張り公園にあるカフェに向かった。
入口には【本日貸切のため臨時閉店】という札がかかっていた。
「さっ、ルヴァ様入ってください」
入り口の前でマルセルはようやくルヴァの腕を手放すと、ドアを開けた。
カラーンと鈴の音がしたとたん、中から
『Happy Birthday!!』
という声とともに、クラッカーが鳴り響いた。
「これは一体?」
「いいから入ってください」
ルヴァはマルセルに背中を押され喫茶店の中へと足を踏み入れた。
その後からマルセルは喫茶店に入り電気を点ける。
明るくなった店内の真ん中には店の机を集め大きなテーブルになっていた。
その上にはたくさんの料理と、デコレーションケーキが載っている。
テーブルの向こうには守護聖が勢ぞろいしていた。
「こ、これはいったい?」
何が起こっているのか全くわからないルヴァはその場で呆然と立ち尽くす。
「オイ、ルヴァ。いつまでぼーっとしてるんだ?今日はルヴァが主役なんだからな」
「私が主役?」
「今日が何の日だかわからないのか?」
クラヴィスにそう言われても何の事だかわからない。
「今日はそなたの誕生日だろう」
ジュリアスにそう言われルヴァは少し考えた。
「ああ、そういえばそうですね。すっかり忘れていました」
「ルヴァ様忘れてらしたのですか?」
ランディがビックリして聞くと、
「ええ、長い間生きているとね。すっかり忘れてしまうのですよ」
ルヴァは笑いながら言った。
「折角目の前においしそうな料理があるんだから、さめないうちに頂きましょう」
リュミエールが言うと、
「さんせーい」
とオリヴィエも賛成した。

みんなのお腹が程よく膨らむと、マルセルが
「ルヴァ様こちらに来てください」
と言い、部屋の隅にある布をめくった。
下から出てきたのは包装された箱が沢山。
「こ、これは?」
「みんなからルヴァ様へのプレゼントです」
「私へのプレゼント?」
信じられないと言う顔でルヴァは言うと、箱を一つ手にした。
「開けてもいいですかね〜?」
そういうと、リボンをほどき、包装をほどいた。
中から出てきたのは万年筆。
「これは、昔私が愛用していて、使い物にならなくなった万年筆と同じもの」
「ルヴァ様。そのプレゼントは誰からだかわかります?」
マルセルにそう言われ、ルヴァはみんなの方をみた。
「ええ、わかります。この万年筆は――ジュリアス。貴方からのプレゼントですよね」
「そうだ、そなたが大事に使っていたのを覚えていたのでな」
「ジュリアス。ありがとう」
ルヴァはそう言うとまた箱に目を向けた。
「これは、かすみそうの種。マルセル貴方からですね」
「正解です。7月12日の誕生日花って何か調べたら何種類か出てきたのです」
「それで、いくつもある中からどうしてかすみそうを選んだんですか?」
「かすみそうの花言葉は【感謝】――だからかすみそうにしたんです」
「ありがとう。マルセル」
次にルヴァが手にしたのは本。
タイトルを見ると『正しいナンパの仕方』
「これはあきらかにオスカーですね。使うことはないとは思いますが、私の本棚に一緒に並べておきますね」
ルヴァは次々と中身を見ていった。
リュミエールからはハーブの詰め合わせ。
クラヴィスからはお守り。中に7月12日の宝石『ビックスバイト』が入っているらしい。
ランディからはルアーセット。
オリヴィエからはお肌のお手入れセット。
そしてゼフェルからはタイマー付きキーホルダー。読書に夢中にならないようにということらしい。
みんなからプレゼントをもらうとルヴァは、
「本当にありがとう。いい誕生日を迎えれましたよ」
と言い、今まで見せた事もないような笑顔を見せた。


F i n



          ここまで読んでくださった方本当にありがとうございました。
          そして、お疲れ様ですm(_ _)m
          初めての守護聖さま総出演。ものすごい事になってしまいました。
          これだけ長く書きながらもなんだか中途半端な終わり方。
          次の日はきっとみんな執務どころじゃないでしょう(笑)
          またよろしければメール掲示板で感想など聞かせていただけると、
          嬉しく思います。


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